会話形式で楽しく学ぶ人事労務管理の基礎講座
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文書作成日:2019/09/12


 坂本工業では、メンタルヘルスの不調で休職している従業員がいるが、来月に復職したいという申し出があった。どのように対応したらよいか分からなかったため、社労士に相談することにした。

 こんにちは。さっそくですが、休職中の従業員の復職について相談にのってください。

 はい。状況を詳しく教えていただけますか?

 現在、メンタルヘルスの不調により休職している従業員がいるのですが、来月から復職したいという申し出がありました。体調も回復し、主治医から復職したほうがよいと言われたそうです。このまま復職させても問題ないのでしょうか?

 復職の判断は慎重に行うことが求められます。特にメンタルヘルスの不調は、復職したもののその後、症状が悪化し、再度、休職するようなケースも少なくありません。そもそも復職について、就業規則にどのような定めがありますか?

 就業規則には、「休職事由が消滅したときに復職する」とのみ規定されています。かなり前のことになりますが、従業員が足を骨折し、出勤できないことから1ヶ月間ほど休職した事例がありますが、そのときは、ギプスが取れて、出勤できる状態になったので復職しました。

 そのときは、復職の判断に迷うことはなかったのですね。いまはメンタルヘルス不調での休職が増えているので、復職のルールをもう少し詳細に規定しておいたほうがよさそうですね。

 どのような点に注意が必要でしょうか?

 今回、本人が復職したいと申し出ていますが、本人からの申し出を受けて、自動的に復帰させることで問題となることがあります。具体的には、十分に復調していないにも関わらず、焦って復職しようとして、結果的に本人にとっても会社にとってもよくない結果となってしまうということが見られます。もちろん、復職を勧める主治医の意見は重要ですが、最終的な復職の判断は会社が行うべきです。

 以前、休職は会社が従業員に対して命じるものという話がありましたが、これと同じ考え方ですね。

 そのとおりです。もちろん、復職の判断において、主治医の意見は重視しますが、主治医が職場の状況や仕事の内容・負荷を十分に把握している場合はあまり多くないように思います。よって、主治医の意見を尊重しつつ、会社は職場環境や従業員の業務内容を理解している産業医等の意見も聴いた上で、総合的に復職の可否を判断するとよいでしょう。

 なるほど。私たちには医学的な知識もありませんので、医学的な知識と職場をよく知る産業医の判断は適切なものといえますね。

 そうですね。より実務に即した意見となるように、産業医の意見を求める際には、従業員の業務内容や職場環境、職場における人間関係等の情報を伝えることが重要になります。復職しても問題がないのかということに加え、復職するときには復帰前後に配慮すべきことも確認するとよいでしょう。

 確かに、従業員の業務内容や職場環境を踏まえた意見をもらうことは重要ですね。

 ところで「試し出勤」という言葉を聞いたことがありますが、当社でも実施すべきでしょうか?

 メンタルヘルスの不調が原因で休職したときには復職前に、「試し出勤」や「リハビリ出勤」と言われるものを実施することがありますが、内容は様々で例えば以下のような内容が考えられます。

  1. 模擬出勤:勤務時間と同様の時間帯に、デイケアなどで模擬的な軽作業を行ったり、図書館などで時間を過ごす。
  2. 通勤訓練:自宅から勤務職場の近くまで通勤経路で移動し、職場付近で一定時間過ごした後に帰宅する。
  3. 試し出勤:職場復帰の判断等を目的として、本来の職場などに試験的に一定期間継続して出勤する。

 これらを必ず設ける必要はありませんが、職場復帰を決定する前に、これらを実施することで、より早い段階で本人に復職を意識付けるとともに、復職できるかを確認することができます。

 なるほど。まずは規則正しい生活を行うことができるか、職場まで通勤ができるかというようなことを試すわけですね。試し出勤により、休業している従業員の不安を和らげ、従業員自身が職場の状況を確認しながら、復職の準備を行うことができそうですね。

 その通りです。この試し出勤の制度を導入する際は、その処遇や災害が発生した場合の対応、人事労務管理上の位置づけ等を検討し、あらかじめルールを定めておく必要があります。実施するときには、復職前の試し出勤なのか、復職後の試し出勤なのかを明確にしておきます。通常は、復職ができるかを確認する目的として、復職前に実施することになります。このとき、作業について会社が指示を与えたり、作業内容が業務に当たる場合は、労働時間となり、賃金の支払いが生じたりします。

 試し出勤をするときには、事前に取扱いを整理し、本人にもその位置付けを伝えておく必要があるということですね。

 そうですね。また、復職したものの短期間のうちに、再度、欠勤するようなケースがあります。通院のためにやむを得ないようなケースもありますが、症状が悪化し再度休職させることもあるでしょう。そのときには、復職する従前までの休職期間と、再度命じることになる休職期間を通算するのか、それとも、新たな休職期間とするかで、休職できる期間が異なります。このような点も含めてルールの策定が求められます。

 なるほど。一度、復職のルールをまとめてみたいと思います。


>>次回に続く



 今回は、従業員を復職させる際の注意点について解説しましたが、ここで産業医の選任についてとり上げておきましょう。
 産業医の選任義務があるのは、労働者が50人以上の事業場です。労働者数は企業単位で判断するのではなく事業場単位で判断します。またこの労働者数には、パートやアルバイト、自社に派遣されている派遣労働者も含まれます。労働者が50人未満の事業場では、産業医の選任義務はありませんが、産業保健総合支援センターの地域窓口(地域産業保健センター)が労働者の健康管理等に係る業務についての相談などの支援をしています。産業医を選任していない事業場で、どこに相談してよいか困っている場合は、一度、産業保健総合支援センターの地域窓口(地域産業保健センター)に相談してみてもよいでしょう。

■参考リンク
独立行政法人労働者健康安全機構「産業保健総合支援センター」
https://www.johas.go.jp/shisetsu/tabid/578/Default.aspx
厚生労働省「こころの耳」
https://kokoro.mhlw.go.jp/

 

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

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